協会創立50周年を祝して ~存在の意味~

美郷町長 松田 知己

 六郷登山協会創立50周年、誠におめでとうございます。半世紀にわたる歩みに心からの敬意を表しますとともに、大きな節目の一つを迎えられましたことに心よりお祝いを申し上げます。

 さて、六郷登山協会のみなさんは先刻承知のことと思いますが、イギリスの登山家ジョージ・マロリーの名言「そこに山があるから」の意味について、私はこれまで深い意味を有した言葉と思ってきておりました。しかし、この度の寄稿を機会にして、実はそうではないことが分かりました。発言主旨を確認するため調べたところ、ニューヨーク・タイムズ記者からの「なぜあなたはエベレストに登りたかったのか」という問いに、「なぜならそこにそれがあるから」と答えていて、つまりエベレストがそこにあるから登るのだという、未踏の最高峰を登頂したい登山家としての実に率直な思いを述べた発言でした。この事実を踏まえますと、エベレストという山がどういう存在の意味を有しているか、改めて考えるところです。

 おこがましいですが、エベレストは登山家にとって制覇したい目標だろうと思います。その理由は人によってさまざまだろうと思いますが、いずれその存在があるからこそ、人は訓練を重ね、準備を整え挑戦し、一連の行為を通じて自己存在の確認を行うとともに、自らの人生に一定の満足感を得ていく、ということではないかと思います。漠とした視点ですが、それがエベレストという山の存在意味の一つであるように私は思います。そしてこのことは、スポーツなど全般に共通で、例えば名立たる大きな大会は、それがあるからこそ選手はがんばるし、その選手の人生を深めることに繋がる存在意味があるように思うところです。

 そうした点で考えますと、六郷登山協会も大切な存在意味を有する組織です。登山愛好者が自らの想いを寄せ、他者と共感を得られる組織。さらに掘り下げると、登山を通じて自己存在を確認できる組織と思います。こうした確認行為は、個人が生き生きと人生を重ねる観点で実に大切です。また、そうした個々の生き方の総体で、地域の気風が醸成されていくように思いますので、美郷町に六郷登山協会はじめ各般の組織があって、多くの方が参画することは、地域の未来を良い方向に牽引していくものと信じております。その意味で、大きな節目を得た六郷登山協会には、今後とも多くの会員参加を得ながら、活発な活動展開を期待いたしますとともに、存在の意味がさらに深まる組織となりますことを、心から祈念いたします。