富士登山

髙橋 龍子

 二〇一三年六月、世界遺産登録になったばかりの富士山に、登山協会四十周年記念登山でこの年、九月九日に山頂に立ちました。


 九月七日 富士スバルライン五合目駐車場。
 富士の頂上は雲の上で見えません。

 少し歩いて、一泊目は佐藤小屋です。
 小屋の主人は、TDKの野球部に所属していた事があり、私達が秋田県から来たというのでとても懐かしがってくれました。
夕食後、お酒を呑みながら楽しく語らいました。
自家製のコケモモ酒を御馳走になったりして、思い出深い山小屋です。


 翌朝、八合目の小屋を目指して出発。
花も咲いていない、ザレ場の登山道をただズルズルと強い風の中の登りです。
体を持って行かれそうになったり、小石が顔や目に飛んで来て、防護メガネが役立ちました。

 この日は八合目元祖室小屋に泊まりです。
富士山の上のほうの山小屋の夕食は、カレーライスが定番のようです。
いつも山行で思うことは、高い山に来てご飯を出して貰えることは、とても有難いという事です。
金剛杖を買い求めて、小屋ごとに焼印を押して貰いながら、登りました。


 九日 早朝2時起床で、頂上を目指します。
御来光を拝むために多くの人々がヘッドランプを点けて、登山道が光の帯になって続きます。

 頂上近くになって篠原ともえさん一行が登って来て、スタッフの人が「篠原ともえさんが登ってきます、片側に寄って下さい」という様な事を、大声で煩く言うものですから
「それが何か?私達も登っているんですけど」なんて口を利いたりして、頂上に着きました。

雲間から、太陽が出て来ると、居合わせた人達が「オー」と歓声をあげて、手を合せました。


 今度はお鉢巡りです。一周約三キロ、九十分。
上は晴れていますが、下は雲海です。
影富士を見る事が出来たのもラッキーで、運が良かったと思います。

 剣ヶ峰で記念撮影と休憩、寒くなりました。
九月に入っているので、神社も土産屋も冬仕舞いでした。


 日本一の山、日本人の山富士山に「私、六十二歳、登ったんです」

 誇らしさと自慢に思う気持ちが、今でも湧いて来ます。

 ドーンと富士の雄姿を仰ぎ見ることは叶いませんでしたが、とても素晴らしい山行でした。