アップルタイム
小松 勉
秋口から春先の山行や山菜取りに橋本さんと同行すると、「アップルタイム」と言って、きれいにむいたリンゴを必ずと言っていいほど持って来てくれました、そして実にタイミングよく、出してくれたものです。
例えば総会当日の黒森山への山行では潟尻を出発し、六小の森のコルのあたりで一回、そして町民の森のあたりでもう一度、背中に軽く汗をかき、のどの乾いたちょうどいいタイミングで「アップルタイムだ」と言って出してくれる。自分の荷物から飲み物を出す間もなく差し出されたナイロン袋に手を突っ込み冷たく甘酸っぱくみずみずしいリンゴを頂く、とてもうまい、前日の酒が残っているときなどは言わずもがなである。
慣れとは恐ろしいもので橋本さんの持って来てくれるリンゴを当たり前と思い、自分の食糧計画に入れてしまう、橋本さんのリンゴがあるから水は少しでいいとか自分の食糧から省いてしまう、情けない後輩である、そしてたまに持って来てくれてなかったりすると、当てが外れてがっかりしたものである、本当に情けない。
キノコ採りでも、「おーいあるどー」と呼んでくれ、行ってみると倒木いっぱいのキノコである、「まず写真撮ってからだ」と言って取らずに待っていてくれる、「きれいにゆっくり取れ、後で楽だし、うまい。」まったくそのとおりである、ゴミが付いたキノコは洗うに大変だし洗いすぎたキノコは美味しくない。
自然を愛し皆を思いやる心を持つ氏に少しは近づきたいと思っているのだが、なかなかおいそれとは真似できないでいる。