夏の日の四阿山
宇佐美 進
登山協会に入会して2度目の夏、私の登山人生でも初めてとなる遠征登山。私が入会したのはコロナ禍真只中。移動を制限され、遠征登山を断念した年だった。私は山行には参加しなかったがその年は秋田駒ケ岳、乳頭を縦走して乳頭キャンプ場で皆と懇談した。先輩たちの話を聞き遠征登山の期待が膨らんだ。来年こそは遠征登山をしたい、そう思った。そしてついに遠征登山で四阿山に登る時がきた。それは50周年を翌年に控えた令和4年の夏だった。
令和4年7月29日早朝、いつもの集合場所である中央ふれあい館に到着。荷物をバスに積み込み出発。修学旅行以来の高揚感を感じた。走り始めて少ししたらビールが配られた。期待を胸に呑む朝酒は実に美味いものだ。そしてバスは日本海沿岸を南下する。新潟県内で昼食をとり、長野県へ入る。菅平キャンプ場をベースに根子岳・四阿山の二峰を頂く2泊3日の山行である。キャンプ場に着いてテントの設営をしてまずは一杯呑む。これまた美味い酒だ。そして晩御飯は無国籍料理「ワルン・ジュン」という店に入った。そこでもまた酒は美味い。たまたまギターが置いてあったのでつい、弾き語ってしまった。皆、フォークソングで盛り上がった。ところが私たちが盛り上がっている頃激しい夕立があった。そしてお腹も心も満たされてキャンプ場に帰ったが夕立の雨でテントの中が水浸しであった。皆で急いで一度荷物を外に出し、テントの中の水を出して二次会である。そして翌日の安全を願い就寝。
あくる30日早朝、菅平牧場から根子岳に登り始める。登り初めて5分ほどのところで朝食をとった。そこからは北アルプスの峰々が一望できた。その日は多少雲があったが概ね晴れだった。そこから2時間余りで根子岳山頂に着いた。その時、私の登山人生で初めて県外の2000m級の山に登頂した瞬間だった。私は終わりの見えないコロナ禍の終点が見えた気がした。そして根子岳から四阿山を目指す。根子岳から一度下りそして四阿山に登り返す。根子岳と四阿山の植生が違うのもまた面白かった。そして四阿山の頂を踏んだ。皆、達成感に満ちていた。そして下山。菅平牧場のソフトクリームがまた美味しかった。キャンプ場に戻り、お風呂で汗を流して恒例の宴である。その日は焼肉だった。料理には自信があったので焼きそば対決もしたりと盛り上がった。皆心ゆくまで楽しんだ。
皆が寝静まった頃、私は一人で呑んでいた。キャンプ場から見る星空は実に綺麗で感動した。これまた酒がうまい。心が満たされたところで就寝。
翌朝、日の出前に起床。根子岳四阿山からのご来光を待った。そして日の出の瞬間が訪れた。日の出の瞬間はいつも心が無になる。日の出を眺めながらの酒はまた実に美味い。そして朝食を済ませテントを片付けて菅平をあとにした。帰路の途中、善光寺へお参りした。善光寺通りで食べた蕎麦も美味しかった。
登山人生で初めての遠征登山。会員の皆と大自然の中を歩くという非日常の体験ができた夏でした。