黒森讃歌「山びとわれら」について

岩屋 朝徳

 六郷登山協会創立当時の大先輩たちがよく歌う歌があった。彼らは黒森山の頂上で、宴会の席で、必ずその歌を歌った。「黒森山は美空に高く、すそ野千町田打ち開け、樹木立ち栄えて里曲をめぐる、げに麗しき・・・・・」大先輩たちがいなくなってもこの歌は、毎年山頂にある黒森神社の祭典の日に登山協会会員によって歌い継がれた。ここ最近は畠山正会長のハーモニカの演奏に合わせて歌うのが通例となっていた。

 50年間、登山協会会員によって歌い継がれてきたこの歌は、実は旧六郷小学校の校歌であった。長い歴史を持つ六郷小学校で、制定以来歌い継がれてきた校歌だったが、敗戦国である日本では連合国進駐軍に遠慮しなければならない歌詞があって2番の歌詞が歌われなくなり、やがて昭和26年に新しく「六郷小学校唱歌」を制定して校歌の代わりとして歌うことになった。

 それ以来歌われなくなり、町民から忘れ去られた「校歌・黒森山」だったが、1年に1度だけ黒森山頂で登山協会会員が歌うことによって、かろうじて歴史は守られてきた。

 六郷登山協会50周年を期に、その歌詞を黒森山にふさわしいものに変え、前奏や伴奏も加えて楽譜もしっかりと残し、登山協会の歌として長く残そうという意見が出された。意見は尊重され、令和5年春に作詞、編曲が完成した。歌は12月9日の50周年記念祝賀会において町民に披露された。

 六郷登山協会は、黒森山をホームグラウンドとして活動を続けてきた。黒森山を歌い続けてきた。いろいろな角度から調査も続けてきた。足元をしっかり固めてこそ遠くへ飛び立てる。歴史を受け継ぎ、伝え続けて、さらに深めてきたのは、ここが我々の帰る場所だからである。山を愛する人々が、これからも末長く、集いあうことを願った「歌」が「山びとわれら」である。