剱岳登山での大いなる達成感と喜び

福田 世喜

  これまで私は、「できるだけ多くの日本百名山に登りたい」という願望を抱いてきたが、その山の中で、最も困難な山は剱岳であろうと思ってきた。年齢を考えると、剱岳はもう無理かもしれないとの思いもあった。そのような折、六郷登山協会創立50周年記念山行として、立山・剱岳登山が計画された。この山行に、私は多くの不安を抱えつつも、最後のチャンスと思いエントリーさせていただいた。

 剱岳登山に向けて、5月に事前研修会が実施された。そこで私は、ハーネスやカラビナ、スリングの使い方の講習を受け、横手市蛇の崎橋近くの土手石垣で、岩登りの実地訓練も受けた。すべてが初めての体験であった。その後、習熟できるように練習を心がけたが、岩登りの練習を一人でやるのは危険で、イメージトレーニングにとどまった。また、登山に必要な基礎体力づくりに向けて、4月から10回ほど、いろいろな山に登ってきた。それでも不安なことは様々残っている状況であったが、7月27日の出発となった。

 7月29日、いよいよ剱岳登山の日である。天気は快晴。4時10分に、10名がヘッドランプで足もとを照らして出発。6時30分に前剱に達した。ここまで順調。その後は、急斜面、ブリッジ、岩峰のトラバース、急な岩場などを経て、最も難しいと言われる「カニのたてばい」の前に立った。先着の人々の登りをしばらく待って、私も登りに着手。下の方は見ないようにして、先に進む小田嶋尚人さんの手や足の動きを見習って、登りの作業に集中。クサリを力ずくで引っ張って登った所もあったが、「カニのたてばい」を何とかクリアした。その後の頂上への登りもきつかったが、9時30分頃、5時間20分余りをかけて、ついに剱岳山頂に立った。大感激!

 山頂からの大パノラマに見入りながら、持参のアンパンなどを食べて休憩した。

 10時に下山開始。下山中の事故が多いことから、十分に注意して足を進めた。

 午後2時前に剱山荘に到着。下山の所要時間は4時間ほどであった。万歳!。

 全員が、事故も怪我も無く下山できたことは、快挙であった。リードしてくれた皆さんのお蔭であり、深く感謝する。

 振り返ってみると、剱岳登山は、大自然のなかにある危険性の高い巨大なフィールドアスレチックに挑戦したようなものであった。そこでは、かなりの体力と高度感への度胸が必要であったし、スリリングな関門がいくつも待っていた。それらを乗り越えて無事に下山したときには、大いなる達成感と喜びに満たされた。