針の木岳

畠山 みほ子

 2018年7月28日

 朝5時 北アルプス針の木小屋を針の木岳~種池小屋を目指して出発。

ザックの中には小屋で作ってもらった朝食が入っている。台風の影響で風と小雨の中、レインウェア上下を着て黙々と歩く。登山道のそばには高山植物が咲いているが、朝早くの出発で緊張感があるのかそれらをチラッと見ながらカメラを向ける者もいない。 今日の予定のコースが気になっていて高山植物どころではないのだろう。

 1時間ほどで針の木岳(2821m)に到着。 

 今日歩くだろう稜線を眺めながら「もしかして、ここで退却かな?」と風を避けられるところで朝食を口にしながら考えていた。 朝食が終わったところでリーダーから「予定を変更して針の木雪渓を下ります」と。

 ああ やっぱりだ、予期していたこととはいえ 心が沈んだ。

40年以上も前 大学に入って初めての北アルプス合宿で鹿島槍ヶ岳から針の木岳までの縦走の計画だったが、パーティの一人が体調不良となり下山。 針の木岳の稜線を歩けなかったことを、針の木岳山頂で思い出してしまった。

 今回の山行は、登山協会45周年の記念登山ではあったが 台風には勝てない。2500mほどの岩稜帯を歩くので、雨や風はとても危険で断念したのだが、ちょっとほんのちょっと残念。 扇沢から種池・針の木岳へといつかまた、歩けるときが来るのではないかと思った。

 18歳の時から山歩きを始めて、途中長い長いブランクがあり中高年登山を再開。

長いブランクを埋めるようにたくさんの山を歩いた気がするのだが、もう行けなくなった山のほうがよけいになっている。 針の木岳の稜線歩きもおそらくもう歩くことはないだろう。自分の年齢を考えるともう山歩きもそろそろ…と最近はとみに思う。でもこの年齢になるまで山を歩くことができたのだから感謝です。 これも山の会に入って、いろいろ刺激をもらっていたからのこと。

 それでも 今回の山行では80歳代の先輩方が針の木岳の山頂に立った。

 奥山さん・小原さん・橋本さんの3人だ。心身ともに健康であれば山も逃げていかないのかなあと感心した。

 下りは、針の木小屋で買い求めた軽アイゼンを履き雪渓を下った。

  ♪ 山よさよなら ご機嫌よろしゅう
    また来るときには笑っておくれ また来るときには笑っておくれ ♪