初めての登山
谷口 敏広
県北に赴任した頃の話である。私はそれまで登山とは全く縁が無かったし興味もなかった。先輩諸氏に登山を趣味とする人がいて、いろいろお世話になっている事もあり、再三再四誘われる内にその気になり行ったのが早池峰山であった。そこにはハヤチネウスユキソウという花弁の大きな高山植物が咲いていて大変綺麗だとのふれこみであった。
前日に麓の山小屋に泊り、薄暗い早朝に起きて早々と朝食を食べ初登山が始まった。始めの30分ほどは体が重く息が切れ苦しい。初心者の私を気遣って休憩をこまめにとってくれるのがありがたかった。休憩の合間には景色を眺めたり、花の写真を撮ったりしていた。途中の岩場で話題のハヤチネウスユキソウを見つけ、そのひっそりと凛々しく咲いているのを見ていいなぁと思った。その先輩はゼンザブロニカという中判のカメラと三脚を持って、花を見つけては撮って喜んでいた。大変そうだなと見ていたが、本人はそれがまた楽しいという風であった。汗だくで何とか頂上にたどり着いた。頂上で祝杯の缶ビールを飲んだ。これまでの苦労が吹き飛ぶおいしさであった。
初めて山に連れてきて貰って、山への認識が大きく変わった。山の魅力を教えて下さった先輩諸氏に感謝したい。その後、同年代の同僚と二人で岩手山、岩木山にも登ってみた。それぞれ予期せぬことがあり大変な思いもしたが、思い起こせば楽しい思い出である。この頃は相棒と近場の山を歩いて楽しんでいる。